ブロガーすなるレビューといふもの、製品のブツ撮り写真がつきものなり。

私が写真を本格的に始めたのは、実はちゃんとしたブツ撮り写真を撮りたいというのが一番大きい理由でした。
レビュー記事に大事な両輪は、製品への理解(良くも悪くも)と親しみを伝える文章と、製品の様子が正確にわかる写真。

素材の質感や手に取った時のサイズ感だったり、誇張過ぎない見たままのカラーだったり、実際に本物を見る代わりに役立てるような写真を撮ることを目標に今も日々勉強中です。

Still Life Imageing practice

例えば、PETZLのヘッドランプ。記事のアイキャッチ画像をイメージ。

「見たまま」を撮ることがなんと難しいことか。
もちろんそのままシャッターを切れば、そのまま写るし、何なら今のスマホなら高画質で鮮明な写真はいくらでも撮れるんだけど、「これいいな。触ってみたいな。かっこいいな」とか思わせる写真は、カメラ機材の他に背景やライティングや被写体アングルなどなど、細部にわたるまで緻密に計算されたテクニックの積み重ねで成り立ってるんだなと痛感しています。

 

このブツ撮りを究極に突き詰めたのがコマーシャル・フォト。
雑誌広告やポスター、街中の大型看板などに用いられるコマーシャル・フォトは、正確なプロダクトのディティールは保ちつつ、さらにドラマティックに昇華させ、製品の世界観のファンにさせるというか、「これを持ったら、俺、かっこいい」みたいな(笑)、写真を見ているだけでも心を揺さぶられる力があります。

普段デスクの片隅でこそこそブツ撮りを撮ってるブロガーからしたら、コマーシャルのスタジオ撮影が一体どんな規模で、どんな手順で行われているのか興味津々。

それを惜しげもなく、機材、セッティング、撮影手順、バリエーション、そしてそのプロダクトに対するこだわりに至るまで事細かに伝授してくれたのは、フォトグラファー・南雲暁彦さんによる、雑誌「コマーシャル・フォト」の連載「Still Life Imaging 素晴らしき物撮影の世界」。

先月、17回にわたる連載が終了したところで、その連載内容に、使用カメラ機材やレンズのインプレッションや、プロローグ/エピローグとしてブツ撮りに対する南雲さんの想いが加筆され、完全版となった「Still Life Imaging スタジオ撮影の極意」が出版されました。

DSC03734

プロ仕様の本格撮影機材の説明がところどころ難解だとしても、光をどこからどれだけ当てれば、どういう風に製品が見えてくるのか、事細かにわかりやすく図解されていて、正直「ここまで教えてもらってもいいんですか!」とワクワクしっぱなし。

DSC03737

本書で紹介されている撮影素材は、バッグ、靴、ミニチュアカー、洋服、ヘルメットなど、私達でも普通に撮影していてもおかしくないものばかり。そして、何より撮影カメラとして iPhone を使っている驚きの作例もあります。
準備から撮影手順までのポイントとTIPSも丁寧に書かれているので、見様見真似でも、自分の持ち物で代用してみるだけでも、ものすごく勉強になりますね。

DSC03739

バッグを引き立たせる背景のドレープも、スタイリストが表情を作りこんで、その質感を美しく見せるためのライティングもいろんなバリエーションを試して突き詰めていく過程も掲載されていて、光量の微妙な違いでイメージががらっと変わることに驚かされます。

「日常」を「極上」に変えるプロフェッショナルの本気の技術の結集を見せてもらいました。

著書「Still Life Imaging 」にかけた想い。|南雲暁彦 Official Web Site

上記の記事の中で南雲さんは、「自分の仕事や趣味のフィールドにおいて、普段の生活の中で、新しくチャレンジする世界の中で、それを豊かにしうるイメージやアイデアも持つ。その種となること、それが僕の本書におけるもう一つの目的なのだ。」と書いてくれたのが、とてもうれしかった。

この本は、ある意味プロフェショナルの教科書のようにも見えるけど、「映え」という流行に象徴される現代人の生活の中で、写真を撮る人すべての人たちへ捧げるバイブルになりうる名著だと私は思いました。

「心躍る写真を撮りたい」という一番大事な原動力を生み出せると思うから。

インスタグラマーも、ブロガーも、メルカリユーザーだって、読んでみればいいじゃない。
自分の写真を通じて、その製品を好きになる、欲しくなるユーザーが一人でも増えてくれたら、素敵だとは思いませんか?

おまけ:読んだら撮ってみたくなったので・・・

冒頭に載せたヘッドランプ。ちょっとカッコよく撮ってみたくなった。
この本を読んで、すっかりその気になった私は、早速思い立つ。

DSC03732

ぐるりと自分の部屋からかき集めた照明器具はスマホライトと懐中電灯とスマホ用クリップライト、それと雑誌の付録についてきたレフ板。
いいんです!気分です!3灯もあれば何でもできる(←嘘です

普段レビュー用写真では出さない、雰囲気一発の写真を撮ってみました。
いやーーー、楽しい!楽しすぎる!
皆さんも、let’s ブツ撮り!

Still Life Imageing practiceStill Life Imageing practiceStill Life Imageing practice