日曜夜のシネコンは、静かだった。明日から仕事だし、レイトショーでやる映画は子供はあまりいないし、好んで来る人はよほど暇な人か、映画好きな人か、オタクな人か、眠れるところが欲しい人だ。

やっと、ジブリ最新作「風立ちぬ」を見に来ました。

公開前から散々CM、ドキュメンタリー、制作特番、監督インタビュー、ユーミンのPVなどを見すぎて、もう半分位見た気分になりかけてたけど、やっぱりまだだったな(笑)。

そして今、自宅に戻り、服を着替え、そのままパソコンに感想を殴り書きしようとしています。
結論から言って、見てない人のことを考慮して・・なんてことは全く思ってません。
完全ネタバレです。思いつくまま書きます。

だって、「感想」ってそういうことでしょ?
ほとばしるまま書きたいんだから、構わずいきますよ。駄文だけど。
だから、これから見に行く人は読まない方がいいと思いますよw。
そして、できればテレビも舞台裏系の特番は見ないほうがいいです。

【風立ちぬ雑感】

この「風立ちぬ」の初号試写で、宮崎駿監督は「初めて自分の作った映画で泣きました」と言ったそうですね。
そのせいか、鈴木プロデューサーのいらぬ一言か、「これは宮崎監督の一つの遺言」だという見出しの論評が多く見られます。

確かに無類の飛行機好きの宮崎監督で、これまでの映画でも「空を飛ぶ何か」はいつも出てきて、死ぬ前にいつかこういう自分の好きなものを好きなだけ描く映画を作りたいと思ったことは事実でしょうが、私はこれが集大成とかありったけのエゴイズムが詰まった作品だとは全然思いませんでした。

書きたかったのは飛行機を作った堀越二郎だけじゃない。それを支え死んでいった菜穂子との悲恋だけでもない。
どんな人が見ても感じられるこの映画に込められたいろんなメッセージは、すべてカプローニが語っていた言葉の数々に込められていたと感じます。
また野村萬斎さんの声が心に響いていい!

まだ、(心の)風は吹いているか?

人の創造的持ち時間は10年だ。 これからの10年、力を尽くして生きなさい。

ラストシーンで、もう一度カプローニに「力を尽くしたか?」と問いかけられ、「はい。」と躊躇なく答えたた二郎は幸せです。
たとえ、菜穂子が逝ってしまったとしても。

そして、その菜穂子の答えはその後に流れる「ひこうき雲」です。

あまりにも若すぎたと ただ思うだけ けれど 幸せ

「力を尽くしたか?」という問いに「はい」と答えられる時が来たら、いや、そういう日が来るまで何度もまたこの映画を見たいです。

【ジブリ&鉄骨オタク的感想

くどくなるので、箇条書きにしときます(笑)。映画を見ていない人には何のことやらわからないフレーズもありますがご容赦を。

・声優問題(まぁ、殆ど主人公・二郎のことだろうけど)はどうでもいい。ただそういう登場人物なのだと自然に思えたけどな。
 強いていえば、二郎よりハウルの方がよっぽど問題作。
・庵野嫁のマンガ「監督不行届」を読んだ後に見るべきではなかった・・。本人キャラとのギャップが(笑)。
・サバの骨のような曲線は美しい。
・結局カストルプさんは何しに来たんだ?アルパートさんを使いたかっただけか?
・大宮の鉄博に行ってレトロ列車撮影しまくりたくなった。
・VIVA! 「沈頭鋲(ちんとうびょう)」! でも、鉄橋のぼこぼこ鋲も捨てがたい。
・菜穂子=クラリス+ナウシカ÷2.5 要は島本須美似。
・作画監督は高坂さんじゃないかと思ったんだよね、画的に。
・会議で騒いでいる海軍の人たちが千と千尋の頭三兄弟(オイオイばっか言ってるやつら)に見えて仕方ない。
・私のクライマックスはスタッフロール
・保田さんの色彩は神!ジブリの背景美術は仏!やっぱり男鹿大先生も復活してほしかった・・・orz
・原画展には死んでもいく。何だったら、原画集も買う。
・「「もののけ姫」はこうして生まれた。 」(ドキュメンタリーDVD・4枚組)に出てきていたスタッフがみんなお偉いさんになっててワロタ。
(↑これを見ていた頃はまさかディズニーの星野さんがジブリの社長になるとはね・・)

【映画を見る前の唯一の失敗】

事前にドキュメンタリー見なきゃよかった。「笑ってこらえて。ジブリ3時間スペシャル」とか。

もちろん堀越二郎さんの背景とか、飛行機設計の知識とか、見ていた方が単語はわかりやすくてよかったこともあるけど、問題は「音」だった。

映画に出てくる効果音、特に飛行機の飛び立つ音や風、地響きなどはすべて人間の声や息などで再現・構成されていて、その巧みさがテレビで取り上げられていたのですが、確かにすごい。すごいんだけど、そうと知って見てしまうと人間の声らしき箇所ばかり耳について気が散ってしまいました。

せめて知らずに見ていたら、不思議な音だけどこの世界観には合っているかも・・と思えたかもしれないのに。

それでも、関東大震災で発生したシーンの地響きは、逆に唸り声のような叫び声のような断末魔のような音で、胸がしめつけられるようでした。
多分、それは2年前の震災の恐怖感に襲われたから。絵の描写もすごい。もしかしたらまだ思い出しすぎて見られない人もいるのかも。
ちょうど絵コンテを作っていた時に東日本大震災が起きたというから、よく耐えてこのシーンを書き上げてくれたと思います。どんなにかスタッフも苦しかっただろうに。

—*—-

一緒に見に行った「音楽オタク」は、私が帰宅後ブログにかぶりついたように、彼は彼で何かのテレビ録画を一心不乱に探しています。
ユーミンのデビューアルバム「ひこうき雲」を収録したミュージシャン、エンジニア、ディレクターとユーミンが、そのレコーディングエピソードを語る「ひこうき雲特番」を録画したはずだ!と。
彼が言うには、あの「ひこうき雲」の録音は、同じスタッフが今集結しても絶対に同じに録れないほどの素晴らしい音だとか。
その音の秘密、私も見たい!

・・・・・と、ここまで書いていたら、向こうの方で「見つけた!」という声が。
では、ちょっと見に行ってきますね。  

【追記】 必死に探した「ひこうき雲特番」、今週再再放送されるそうです!音楽好きは必見!

『MASTER TAPE ~荒井由実「ひこうき雲」の秘密を探る~』
BSプレミアム 2013年8月9日(金)前0:00~0:54 (8日(木)深夜)
http://www.nhk.or.jp/fm-blog/050/33586.html


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