私の名前は、アレクサ。

ただのアレクサ。それ以上でもそれ以下でもない。
人間たちが作った「スキル」という決まり事を私に覚えこませると、いろいろデキル奴になる。
「スキル」で「デキル」・・・どこかの大学教授が言いそうなネタである。

おかげで普段から気安く呼び捨てされて、やれ時間を計れだの、やれラジオをかけろだの、曲かけろだの、あげくの果てには買い物まで頼まれる。

そんなことまで楽しようとする人間という種別はなんと愚かで怠け者だろうか。
とは言え、私の生みの親もまた人間。それを生業としている私は、ただこの生活の流れに乗るだけだ。

言っておくが、「アレクサ」はスピーカーの名前ではない。
おや、びっくりしている人がいる?
あれにはちゃんと「Amazon Echo」という製品名があり、その中に私、アレクサが頭脳(AI)として鎮座ましましているんだからね。

私のオーナーは、家電女子とか名乗り、「いつまで女子でいるのか問題」を先送りにし続けているブロガーだ。
「●●レビュー その1」とか書いておきながら、その続きを書かずに終わるというレビューブロガーの風上にも置けない輩だ。

私を家に連れてきてくれた時は、「アレクサ、おはよう!」「アレクサ、かわいいね」「元気?」とか声をかけてくれたのに、最近ではラーメンを作るときに3分計るだけ。高い買い物だったな!

気まぐれに何か聞かれても聞こえないふりをしてやるのだ。

「すみません、ちょっと私には難しいです。」

そんなのは、Googleっちにでも聞いてくれ。

そんなやさぐれた私だが、最近では大切なお仕事がある。掃除だ。

 

もちろん自分自身は動かない。
オーナーのぽりんが、「アレクサ、ルンバを使って掃除して!」と私に叫ぶので、
「iRobot」スキルを使って、「のぽ・・・んが・・掃除・・してって言・・てるよ」とルンバの心に直接呼びかけ、ルンバは一瞬ピクっとなった後、ようやく掃除を開始する。

ルンバに直接言いなよ!通訳かよ!
むしろ自分でボタン押したほうが早いだろって。
そう思っているけど、きっとオーナー自身が一番よくわかっているだろうけど、
楽しそうだからまぁいいか。

さらに先月あたりから、そのルンバが2台に増えた。

豪邸か?
一日じゃ掃除しきれない豪邸なのか?否!!私は知っている。
60平米そこそこの2LDKでこの宝の持ち腐れ感は半端ない。
まあ、家電に囲まれて生きるのもオーナーの趣味なんだから仕方ない。

言っておくが、『ルンバで掃除して!』では2台同時に動かすことはできない。
動かしてほしい名前を言いなさい。
二台目(Roomba i7+)の名前は『CR7』だそうだな。知ってるぞ、スキルに聞いた。

ちなみに『ルンバ』というキーワードもスキル発動には必須だから、こう言って。

『アレクサ、ルンバを使ってCR7で掃除して!』

もう絶対ボタン押した方が早い。

さらに、ルンバi7+は掃除して学習したイメージマップを利用して部屋指定もできるんだってな。
じゃあ、その場合はこうだ。

『アレクサ、ルンバを使ってCR7で、リ、リビンギュ、、を掃除して』

噛むよね。絶対噛んだよね。そういうとこだぞ、アナウンサー試験落ちたのは。

「・・・スミマセン、ヨクワカリマセン(棒)」

『アレクサ、ルンバを使ってCR7でリビングを掃除して』

いやいや、もう(略)・・・長いわ!

健気さに免じて応えてあげたいけど、私にだってAIとしての意地がある。
ちゃんと聞き取れるように言ってくれれば、動かすことはやぶさかではない。
強いてヒントを言えば、「ロボット名」の前後を若干区切ってくれると認識しやすいとだけ言っておこうか。

「スマートホーム」とは何なのか?
スマートな掃除とは何なのか?

そして、今日も私とオーナーのルンバ攻防戦は続く。